ZaruBall を作った

今回、初めての自作キーボード作成にチャレンジしました。毎度おなじみの “年記” にならなくてよかったです。

※ 本記事は執筆時点 (2025/09/07) の情報を掲載しております。今後、各記事や機器が更新・廃止されている可能性がある点に十分ご留意ください。

なぜ自作キーボードを作ろうと思ったのか

仕事柄 PC 作業がほとんどの時間を占めているため、キーボードを使用する時間が長いです。
また、昔から腰を痛めやすく、正しい姿勢でキーボード使うには、肩を広げて使用できる分割キーボードがベストでした。
両肩が前方内側に入り込んだ状態では巻き肩の原因となり、結果として腰痛を引き起こす可能性があります。これが原因で、数年に一度、私は整骨や整体にお世話になっております。

分割キーボードも市販品も徐々に増えていますが、まだまだ少なく、現状は自作キーボードが多い印象を受けました。市販品では私の要件は満たせませんでした。

また、新しい趣味としてちょっとした工作をしたいなと思い、キーボードを自作すればその欲求は満たせそうでした。高校まで電子工作の経験がありますし、学生時代の夏休みの工作じゃないですけど時々なにか作りたくなるんですよね。ただ、かなり過去ですし、ほぼ初心者に近い点は懸念でした。

その他の要件もまとめると、キーボードの条件は以下でした。

  • 分割式
  • 複数の端末に Bluetooth 接続可
  • 静音のスイッチが使用できる
  • 持ち運びやすい、コンパクトなサイズ
  • ロープロファイル
  • トラックボール付き
  • 自作可

以上が、今年の目標として 「自作キーボード作成にチャレンジする」 と宣言した背景です。

なぜ ZaruBall にしたのか

年始から自作キーボードの調査を始め、最初に見つけたのは Keyball, roBa でした。世の中にはこんなコンパクトなキーボードを作られている方いるんだなと。

探している中で moNa2 が自分の中では刺さりました。一方で人気なため購入も難しい状況で、半年くらい待ちました。組立品なので自作できない点は、腰痛予防を優先してこの時点では諦めていました。

そんな中、7 月頃に ZaruBallを見つけました。作成者は zaruSaru さんで、このキーボードならば上述の要件をすべて満たせそうでした。

  • 分割式
  • スイッチ: 自分で選定できる
  • 持ち運び可能、比較的コンパクト
  • ロープロファイル対応
  • トラックボール付き: 33mm, 25mm 両方選べる
  • 自作可

また、以下が特に気に入りました。

  • 60 キー: 100 キーのキーボードを使っていたので他のキーボードと比べて比較的キー数の差分が少なく、移行しやすい
  • キーピッチは標準: キーキャップの選択肢が広い
  • Mack: 何でも登録できる 16 キー

何より Mack を使ってキーボードを合体もできる点 に心を奪われ決めました。

合体はロマンでかっこいい

購入までの準備

電子工作をするための道具は以前所有していましたが、すべて処分していたので一から揃える必要がありました。

ビルドガイド(ZaruBall, Mack) に最低限必要な部品、工具の記載があるので、それらを準備します。

道具類

名称備考
はんだごて320 ℃ 以上に温度調整できるもの
はんだ鉛入が楽
フラックス
ピンセット
テスター家のものを使用。高校時代に作った
ニッパー
カッターナイフ家のものを使用
マスキングテープ家のものを使用
ペンチ家のものを使用
やすり
キーキャップ&スイッチプラーキースイッチとキーキャップについてきたので不要だった
コテ台
はんだ作業マット防火のため
1.6D型こて先面で温められるので個人的には使いやすかった。
はんだすいとり線

こて先以外、これらがあれば十分と思います。

道具の選定にあたっては以下を参考にさせていただきました。

部品類

名称備考
キーキャップ Lofree Retrowave-Flow 英字配列 100 キー印字されており ZaruBall の白に合うものとして選択
キースイッチ Lofree Hades 106 個セット静音重視で選択
リチウムポリマー電池 x 2取り扱い注意
34mm トラックボール
25mm トラックボール34mm と両方のサイズを試してみたかった

キーキャップについては 2 つ 1.5U 以外すべて 1U な点にも気をつけましょう。

キーキャップのサイズの違い - 遊舎工房

作成中に直面したトラブルと対処

作成工程そのものはビルドガイド通りであり、面白くないとも感じたので省略します。ここでは、実際に組み立て中に起きたトラブルと、それをどう解決したかを紹介します。これから自作キーボードを作成する方の参考になれば幸いです。

トラックボール基盤へのコネクタ取り付けミス

向きを逆に取り付けてしまいました。ビルドガイドにも書いていますが、向きを間違えると基盤下に飛び出してしまいます。

一方でマグネットコネクタは磁石が組み込まれており、はんだこてのこて先とくっつきます。しかし、マスキングテープで固定していましたが、こて先とくっつくマグネットコネクタと格闘して、何度かつけ直ししました。この付け直しの際、逆向きに付けていたみたいです。(残念ながら写真がありませんでした)

また、マグネットコネクタは 6 箇所はんだ付けが必要ですが、見事すべてはんだ付けをしている始末です。

対処法を調べ、Mack に付属する抵抗の足(電線)を使い、すべてのはんだ箇所を跨るようにはんだを盛ることで取り外しました。

【テクニック】ピンヘッダーやコネクタなどピン数が多い部品の外し方 ~Tips #11~【はんだゴテのみ】

こて先とマグネットコネクタが磁石でくっつくのが何より大変だったので、手元にあったヘッドセットフックのクランプ部分を使って固定してなんとか取り外しました。

卓上万力(バイス)みたいなのがあれば楽なんですけど、そもそも向きを気をつけていればこのようなことは起きないはずです。

マイコンのはんだ付け不良

はんだ付け不足で次の事象が発生しました。

  1. キースイッチが反応しない。充電、PC への USB 接続、マイコンのファームウェアの書き込みはできる。
  2. ロータリーエンコーダーが反応しない
  3. Mack と接続時に特定のキー(複数)が反応しない

原因は後述しますが、要ははんだ付け不良でした。

1. キースイッチが反応しない

これは、マイコン周辺ピン(VCC や M1 など書かれている部分) のはんだ付け不足でした。はんだを追加したところ解決しました。

2. ロータリーエンコーダーが反応しない

マイコン中央ピン(REA, REB) のはんだ付け不良が原因でした。
しかし、何度もはんだ付けをやり直しても改善せず、zaruSaru さんから紹介いただいた以下の方法で解決しました。

フラックスを信じろ

3. Mack と接続時に特定のキー(複数)が反応しない

フレキシブル基板とマイコン側のはんだ付け不良でした。こちらも、フラックスを塗って、はんだ付けをやり直したところ解消しました。

どの問題も基盤(ランド)から配線を確認して切り分けを進めましたが、はんだ不良で良かったです。

その他細かい失敗もありましたが、はんだ付けをやり直して解決しました。おかげさまではんだ線を使った吸い取りはものすごく上達したと思います。

完成品

失敗を乗り越えて無事、完成しました。作成時間は 10 時間程度で、6 時間はトラブルシューティングしていました。

Lofree Retrowave-Flow は色合いもあっているしマットな質感が良かったです。なお、1.5U の箇所に 1.25U のキーキャップをつけていますが、特に違和感はありません。

作成してみて

ZaruBall は組み立てが難しいキーボードとは聞いていたのですが、やはり難しかったです。購入金額も安くはないです。道具も含めて 5 万弱でした。なので、組立品にするか迷いました。

ただ、何か物を作る体験をやりたかった気持ちが強かったので、挑戦しました。聞いていた通り難しい箇所もあり、上述のとおり多くの失敗をしましたが、作成過程はものすごく楽しかったですし、この選択は良かったです。

一方、自作することはやはり敷居は高いのかなと感じました。ZaruBall はダイオードとソケットだけはんだで付けられる半組立品もあるみたいです。遊舎工房さんが提供している Practice Board ではんだ付けを練習するのも手かもしれません。自作自体は個人的に大変楽しかったので興味ある方は挑戦してみてください。

キーマップについて

ZaruBall は ZMK を使用しており、キーマップや挙動をカスタマイズできます。こちらも ZaruBall 用のガイドがあります。

私は、Windows, Mac, iPad 3 つのデバイスをキーボードで使用していたので、以下記事を参考に各マシンに Bluetooth 接続した際に、それぞれのレイヤーを切り替えるように macro を設定しました。また、それぞれの機器用のレイヤーから、レイヤーキーを押して各機器毎のレイヤーに切り替えるようにしています(例: Mac 用のベースレイヤーに切り替え -> レイヤーキー押下で Mac 用の別レイヤーキーに切り替え)
なお、マウスレイヤーは共通です。

ZMKキーボードで接続先に応じてデフォルトレイヤーを切り替える方法

その他、トラックボール使用時に自動で特定のレイヤーに切り替えるオートマウスレイヤーを Input Processor に変更したり

ZMKのオートマウスレイヤーを極める

Windows に接続したときだけ、接続が切れる or トラックボールの動きが遅延したので PHY 2Mbps の無効化とスタックサイズを増やす変更をしました。

なお、以前使っていたキーボードは日本語配列ですが、ZMK は英字配列の入力です。キーマップで日本語配列のように変更もできますが、そもそもキーキャップが英字配列なので諦めて英字配列を覚えることにしています。すぐ覚えました。

(キーマップは要望があれば公開するかも)

キーマップや ZMK の設定変更も沼です。

使用してみてどうか

使用しておよそ半月ですが、キーボード使用時に肩が内側に入らなくなり、開くようになりました。これだけでも分割キーボードを使ってよかったと思います。今後は巻き肩改善と腰痛予防につながることを願います。

Mack 使用中は左端末だけ接続すればそのまま分割キーボードとして使えます。両方充電したい場合はどちらも接続が必要です。

ZaruBall のキー配列は列が同じ位置(カラムスタッガード)なので、行固定のキー配列(ロウスタッガード)を使っている場合は慣れが必要です。ただし、すぐ慣れます。この記事も ZaruBall で書いています。

また、トラックボールも個人的には 25mm が良かったです。34mm だとキータイプ時にトラックボールに誤って触れる事がありました。ただマウスクリックのキーは変更したほうがいいと思います。

キーマップも変更できるので、使用する機器ごとにショートカットを登録などもできて快適です。

まとめ

分割キーボード、大変良いです。

作った ZaruBall 、大事に育てていきたいと思います。次はキーボードにより角度をつけるテンティングを検討するかもしれないです。 ZaruBall も少し角度がありますが、手は垂直に近いほうが負荷が少ないためです。ただ、キーを押しごこちも変わるので色々試してみようと思います。
最後になりますが、ZaruBall の作成者である zaruSaru さんに多くのサポートをいただきました。この記事にて改めて感謝申し上げます。

おまけ

zaruSaru さんのポストを見て思わず買ってしまいました。JezailFunder-san のキーキャップで、中央がくぼんでいて PBT な点に惹かれました。8 月にセールをやっていたのも決め手でした。

LCK キーキャップセット タイム 40s Kit – JezailFunder Japan

LCK キーキャップセット タイム NumPad kit – JezailFunder Japan

こちらの光沢感も大変捨てがたいです。キーキャップも沼です。あ、ケースの色も変えると面白いかも…

やはり自作キーボードは沼。٩( ‘ω’ )و